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豊かな老後のために年金についてまとめてみた

 年金って何?と聞かれて簡潔に答えられる人がどのくらいいるだろう?年金と聞くと「年金制度は危ない」「公的年金はいずれ破綻する」といったネガティブな印象を持っている方も多いはずだ。しかし、年金の仕組みやその制度についてきちんと理解している人は少ないと思う。自身の老後を考える際に必要不可欠な年金についてポイントを整理しておく。 

  1. はじめに

     年金についてを考える前に、社会保障制度について触れておきたい。この社会保障は大きく公的扶助、公衆衛生、社会福祉社会保険の4つに分けることができる。

     公的扶助とは社会的困窮者に一定水準の生活を保障する「生活保護」、公衆衛生は「予防接種」による感染症対策や「がん検診」をはじめとする成人病対策などがあてはまる。社会福祉は社会的に援助が必要な介護認定者への介護施設の提供や障害者の自立訓練、母子家庭への手当支給などが代表的だ。そして社会保険はその名のとおり保険料を支払って病気や老後等に備える制度であり、公的医療保険、公的介護保険公的年金等が存在する。つまり年金とは社会保険の一部なのだ。

  2. 年金は保険

     例えば万が一に備える生命保険や自動車事故等に備える自動車保険、火事等に備える火災保険など、何らかのリスクに備えるのが保険だ。では年金は何のリスクに備える保険なのかというと「長生きリスクに備える保険」である。

     健康保険を例にするとわかりやすい。健康保険は病院等で治療を受けても3割の自己負担ですむ。言い換えると医療費の7割は保険で負担してもらっているということだ。つまり病気になった場合は健康保険から治療費を負担してもらえるが、病気にならなければ健康保険の保険料は掛け捨てということになる。つまり病気にならなかった人のお金で病気になった人の治療費を負担する制度。これが健康保険の仕組みである

     年金は長く生きた場合に備える保険だ。なので長生きした場合は老齢年金を受け取ることができ、長生きしなかった場合は老齢年金は1円も受け取ることができない。早くなくなった人のお金で、長生きした人の老後を保障する制度が年金なのである。年金は誰もが平等にサービスをうけることができる“福祉”と捉えられがちであるが、年金は保険である。長生きした場合のみ保障される制度であるということを抑えておきたい。

  3. 年金の受取額は人によって違う

     年金は長く生きた場合に備える保険だということは先程述べた。では一般的に人はどれだけ長生きするのだろうか?平成27年簡易生命表によると、平均寿命は男性で80.77歳、女性で87.01歳となっている。しかし長生きにポイントを絞るならば平均寿命よりも平均余命で考えたほうがいい。65歳の平均余命は男性で19.56歳、女性で24.31歳となっている。つまり長生きの期間は男性・女性ともに65歳から20年以上と考えるのが妥当だ。

     次に受け取れる金額についてだが、そもそも年金は保険なので、収支相当の原則に基づいて設計されている。つまり、20歳から60歳まで40年間で払った保険料と、65歳以降20年間で受け取る年金額が同じになるという設計だ。要するに1年あたりに受け取れる年金額は、1年あたりに納めた保険料の2倍ということだ。

     ではどれくらいの保険料を収めているのかというと、厚生年金保険料で考えた場合、平成29年9月より保険料率は18.300%で固定されている(労使折半)。つまり月収の2割弱を保険料として納めていることだ。

     ここまでをざっくりとまとめると、収めている保険料は月収の2割で、受け取る年金額は保険料の2倍なのだから、将来受け取れる年金額はだいたい月収の4割ぐらいということになる。つまりここでのポイントは支払った保険料が多いほど、老後に受け取れる年金額も多くなるということだ。逆に保険料をたくさん支払うためには給料を上げるしかない。今がんばって働くことが、老後の安定した生活につながるのである。

  4. 夫婦の組み合わせも大切

     ここまでは厚生年金の話のため、自営業者等の第1号被保険者や専業主婦等の第3号被保険者となると話が変わってくる。第1・第3被保険者の老齢年金は基礎年金のみのため、40年間収めきったとしても平成29年4月分からの年金額は年間779,300円が満額となっている。

     ちなみに、平均的な夫婦2人の老後の生活費は約28万円といわれている*1。仮に夫会社員*2・妻パート(扶養内)の老齢年金の受給額は夫婦合わせて23.3万円のため、毎月5万円弱の赤字が出ることになる。

     では、妻が正社員として働き、厚生年金に加入していた場合*3はどうか?当然、前述のように受け取れる老齢年金も変わってくる。この例だと妻単独でも老齢年金(国民年金+厚生年金)として10万円強はもらえることになり、合計28万円に近づくことができる。このように夫婦の組み合わせによって受け取れる年金額が違ってくる点も注意したい。

     なお、今年より配偶者控除の要件が拡大されたが、どうせ同じように働くのであれば、パートやアルバイトで扶養の範囲内で働くよりも正社員働くことをおすすめしたい。正社員として働き厚生年金に加入することのほうが、将来の年金受給額を考えただけでも老後の安心につながると個人的には思う。

  5. ねんきん定期便を確認する

     年金定期便は毎年誕生月に①年金加入期間②年金見込額③保険料の納付額④年金加入履歴⑤厚生年金の標準報酬月額・標準賞与額、保険料納付額⑥国民年金の保険料納付状況が届くようになっている。ちなみに35歳、45歳、59歳の節目年齢には封筒で、それ以外の年齢にはハガキで届くのが仕様だ。

     ねんきん定期便は、私たちが毎月支払っている年金保険料がきちんと納められており、将来どれくらいの年金が受け取れるのかを確認できる唯一の資料である。言うなれば、ねんきん定期便は「国からのレシート」であり、これ一つであらゆる情報を確認することができるのだ。毎年届くがよくわからないといって捨ててしまわずにかならず中身を確認することをおすすめする。 

  6. おわりに

     以上、年金制度について概略をまとめてみた。たしかに年金と聞くと、制度自体は複雑で取っつきにくい印象があり、その原因はやたらと年金不安をあおるメディアにも問題があると思う。しかし、年金は社会保障制度であり私たちの老後の暮らしを支える大切な制度だ。よくわからないと敬遠せずに、制度を理解しきちんと利用して豊かな老後に繋げたい。

 

*1:総務省統計局平成27年「家計調査」から推計

*2:平均標準報酬額55万円・加入期間38年

*3:平均標準報酬額20万円・加入期間38年